
はしがき
情報通信技術(ICT)の進化、パソコンやスマートフォンといったデジタルツールの普及に
伴い、シェアリングエコノミーと呼ばれる新たな経済活動が生まれている。インターネットや
アプリケーションを介して個人や企業がつながり、保有する資産やサービスを共有したり売
買したりする。民泊やカーシェア、フリーマーケットなどはその一例である。
シェアリングエコノミーの主な参加者は、資産やサービスの提供者と利用者、そして両者
がつながるプラットフォームを提供するプラットフォーマーである。本レポートでは、独自
のプラットフォームを構築してシェアリングエコノミーに参画する中小企業の事例調査を行
い、事業機会の発見や参画のポイントなどをまとめた。
第1章では、シェアリングエコノミーの現状を概観する。シェアリングエコノミーには個人
や企業の間で、生産や消費の効率化に役立つ、イノベーションにつながる、就業や起業の機
会を増やすなどといった、肯定的な評価がある。他方、プラットフォーマーとしてシェア
リングエコノミーに参画しようと考える中小企業は少ない。ビジネスモデル構築が難しい、
リスク管理が大変などといったことがネックになっている。
第2章では、中小企業の事例を 4社紹介する。1社目は、全国の中小製造業者を対象に、遊休
設備を販売したりレンタルしたりできるプラットフォームを提供する企業である。2社目は、
企業間で備品や什器など不用品を取引できるプラットフォームを構築し、サーキュラーエコ
ノミー(循環型経済)を実践する企業である。3社目は、求人のマッチングプラットフォーム
を企業や自治体に提供している企業である。そして4社目は、自動運転車両や乗り合いタクシー
の運行管理、田んぼやオフィスなど地域にあるさまざまな資源をシェアするプラットフォー
ムを提供する企業である。
第3章では、事例企業の取り組みを整理し、まずプラットフォームの特徴や成果を整理する。
収益化には時間を要するものの、自社の知名度が高まったり社内組織が活性化したりするな
ど、成果は少なくない。続いて、プラットフォーム構築のポイントを考察する。構築や浸透
に当たっては、中小企業ならではの専門性やきめ細かさを生かして「範囲を絞る」「一つ一つ
のマッチングの満足度を高める」ことなどがポイントになる。シェアリングエコノミーに参
画することで何を成し遂げたいのかを明確にしてじっくり取り組む姿勢も欠かせない。
本レポートをまとめるに当たり、各企業の経営者や従業員の皆さまにはお忙しいなか、快
くヒアリングに応じていただいた。貴重なお話を聞かせてくださったことに感謝したい。た
だし、あり得べき誤りはすべて筆者に帰するものである。
(日本政策金融公庫総合研究所 藤田 一郎)
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