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コンピューターサイエンスに関わる研究者たちは、10 年以上前から AI を活用した OCR(光学式文字認識)技
術を用いて CAPTCHA を解読しようと試みており、CAPTCHA はAI モデルの画像認識精度向上のためのトレー
ニングとして頻繁に利用されている。初期の CAPTCHA は歪んだ文字や数字をユーザーに入力させる「テキスト
型」が主流であったが、2014 年の時点で OCR 技術により 99.8%の精度で解読可能であることが実証されており
4、テキスト以外での認証方法が求められるようになった。
これにより、「私はロボットではありません」のチェックボックスおよび画像課題を提示する reCAPTCHA v2 や、ユ
ーザーの操作をスコア化し、ボットかどうかを自動で判定する reCAPTCHA v3 が登場した5。これらの認証方法は
テキスト型とは全く別のアプローチを用いており、AI モデルを利用してユーザーのマウス挙動やブラウザ環境など
のフィンガープリントと行動データを調べ、ボットか否かを判別する手法である。加えて、複数の画像から特定のも
のを選ばせる「画像選択型」の hCAPTCHA6が開発され、ユーザーのプライバシー保護やユーザビリティを重視す
る手法が模索された。他にも、視覚障碍者向けに提供される「音声型」や、フォーム表示から送信までの時間が不
自然に短ければボットと見なす「タイミング検知」、スライド式パズルを完成させる「スライダーパズル型」などが存在
する。
このようにして防御側は、「人間には簡単だが機械には難しいこと」を人工的に作り出すかに腐心し、人間と機械
を識別する方法を多様化させてきた。しかし、技術の進歩に伴い、CAPTCHA は「人間に難しく機械に易しい」とい
う逆転構造になりつつある。高齢者が画像選択型 CAPTCHA に苦戦する一方、AI は容易に突破するといった現
象がその例にあたる。
2024 年の研究では、reCAPTCHA v2 の画像課題が最新の AI 技術によって完全に突破可能であることが示さ
れた7。従来の研究では成功率が 70%未満だったが、本研究では 100%の突破率を達成している。実験では、AI
が人間と同等以上の認証能力を持つことが確認され、reCAPTCHA v2 がもはや有効なボット対策とは言えない可
能性が示唆された。また、VPN の使用やマウスの自然な動き、ブラウザの履歴や Cookie の有無が認証の難易度
に大きく影響することも明らかになった。これらの要素を工夫することで、AI は人間と見分けがつかないほど自然に
認証を通過できるようになる。この結果は、今後のインターネットセキュリティにおいて、従来型の CAPTCHA に代
わる新たな人間識別手法の必要性を強く示している。
2. 「人間を模倣する機械」が量産される時代
インターネットの基本理念は、開かれた情報共有とコミュニケーションの自由であり、そのネットワーク性こそが価
値創造の源泉となることという認識にある。実際、インターネット上では「匿名性」をプライバシーと表現の自由を支
える基盤と見なし、人々が実名を明かさずにデジタル空間に参加できるようなアーキテクチャが構築されてきた。
そして、その匿名構造を悪用する行為者が存在する状況が数十年にわたって継続している。こうした背景からイン
ターネットは長らく欺瞞的な活動に悩まされてきたが、現代は過去とは比べ物にならないほどに「人間を模倣する機
械」が量産される時代と言える。
前述の通り、サイバー空間での欺瞞活動に対して、防御側は CAPTCHA に代表される識別技術や数々のセキ
ュリティ対策を施しながら、概ね利用可能な状態を保ってきた。しかし今や、インターネット上の欺瞞活動は、生成
4 Goodfellow et al, (2014) “Multi-digit Number Recognition from Street View Imagery using Deep Convolutional Neural Networks”
5 Google “Protect against fraud and abuse with modern bot protection and fraud prevention platform”
https://cloud.google.com/security/products/recaptcha (2025 年7月23 日にアクセス)
6 Intuition Machines “hCaptcha Enterprise” https://www.hcaptcha.com/ (2025 年7月23 日にアクセス)
7 Plesner, A. et al “Breaking reCAPTCHAv2” ETH Zurich